最近のトレンドでもあるパールについて、スタッフがちょっとマニアックですが興味深いお話をご紹介します。
こんにちは!スタッフなみこです。
先日、箪笥の奥底に眠っていた祖母のジュエリーや着物の形見分けを行いまして、その中にひときわ目を惹く一粒パールのリングがありました。
大粒のアコヤパールがアンティークな石座にセットされた豪華なリングです。
母が「おばあちゃん若い頃はおしゃれだったのよ」と懐かしそうに話してくれて、飾り気のない姿しか知らなかった私にとっては、祖母の新たな一面がみれたような心地がしました。
このリングは私がありがたくお迎えしたので、どんな歴史を辿ったのだろう、とあれこれ想像しつつ永く大切に扱おうと思います。
さて、今回はそんなふうに世代を超えて愛されるパールの、ちょっとロマンを感じるお話をご紹介します。
少々マニアな内容ですが(そして長いです)よろしければお付き合いください。
古くから世界中で珍重されてきたパール=真珠には、古今東西さまざまな逸話が残されています。
中でも古代ローマ時代にプリニウスが「博物誌」に記した「クレオパトラは国がひとつ買えるほどの高価な真珠を酢に溶かして飲んだ」という話は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
この「博物誌」は頻繁にファンタジックな話が飛び出すことでも知られており「真珠は空からの露によって懐胎するので、(その色は)海よりもむしろ空の状態に影響する」とも。想像力が豊かで、これはこれで素敵ですよね。
もちろん科学が発達した現代では「博物誌」のおとぎ話を見抜くことも簡単ですが、真珠について解明されていないことはたくさんあるのだそうです。
その例として、生体鉱物学上最大の難題のひとつといわれている「カルサイト-アラゴナイト問題」というのをご存知でしょうか。
ほとんどの宝石は岩石とともに発掘される「鉱物」ですが、じゃあ真珠は?というとイメージしづらい方もいらっしゃるのではないかと思います。
じつは真珠も鉱物の一種で、骨や歯と同じ「生体鉱物」に分類されます。
アラゴナイトという炭酸カルシウムの結晶の層と、コンキオリンというタンパク質の層がいくつも積み重なってできているのが真珠です。
アラゴナイトは、純粋な結晶だと飴色の松ぼっくりのような形で採掘されることが多い石です。
アラゴナイトと同じく炭酸カルシウムでできている鉱物にカルサイトというものがあります。
こちらは綺麗なひし型が有名な石です。
このような、同じ化学組成をもっているのに結晶配列が異なるために違う鉱物種のことを「同質異像」といって、有名な例としては炭素でできているダイヤモンドと石墨もこれにあたります。
アコヤガイは炭酸カルシウムを用いて、カルサイトで貝殻の外側を作り、アラゴナイトで内部の真珠層を作っています。
貝があの小さな体でどうやってこのふたつの結晶を作り分けているのか?というのがこの「カルサイト-アラゴナイト問題」です。
砂川一郎先生著「宝石は語る」から、そのまま抜粋してご紹介したい部分があります。
「本来は、あられ石(=アラゴナイト)は一万気圧以上の高圧下でなければ安定でない鉱物である。
しかしその真の理由はまだ十分解明されていないが、生命活動が関与してできる場合や、不純物が存在する場合、たった一気圧の下でも平気であられ石は成長し、貝殻や真珠を作っている。
もっとも、こうしてあられ石としてできた貝殻も、地層の中に埋没して長時間たつと、みんな方解石(=カルサイト)に変わってしまうらしい。」砂川 一郎『宝石は語る―地下からの手紙』
40年前の本です。
もちろん近年は研究が進んでいていろいろなことがわかってきているようですが、初めてこの本でこのことを知った時は「へえ~~~」と感心してしまいました。
まだ解明されていない、と言われると興味を唆られてしまいますよね笑
ちなみに最近の研究結果を調べてみたところ、文系畑の私には難しいところも多かったのですが、どうやら貝はアスペインなどの強酸性タンパク質を作用させることで炭素カルシウムを制御している可能性が高いのだそうです。
そうしてわざわざ作ったアラゴナイトをまた別のタンパク質と組み合わせ、層状に積み重ねて作る真珠層…手間暇がかかってますね。
実際、真珠を作る作業は、貝にとっては非常にストレスが掛かる大事件なのだそうです。
貝が真珠や真珠層を作るのは、柔らかい中身を外界や内側に入り込んだ異物から身を守るためです。
ただ、ここまで複雑な構造をしている理由はよくわかっていません。
真珠層は傷つきやすくデリケートな面もあるものの、落としても割れにくい「靱性」という強度がとても高いことで注目されており、この頑丈さが重要なのかもしれません。
世界一硬いとされ、傷つきにくく割れやすいダイヤモンドとは非常に対照的ですよね。
今後さらにいろいろなことがわかるようになるのが楽しみです。
今回は、真珠にまつわる小話を時代を追うごとにご紹介してみました。
興味の赴くまま長々と書いてしまいましたが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!!
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