マイクロ・セッティング

今回は石留めの新技術
「マイクロ・セッティング」について
ご説明します

 

 

きゃしゃなデザインを
実現するのに大切な技術です

 

でもあまり日本では
できるメーカーが少ないので
ジュエリー関連の方でも

 

どういう技法なのか
どういうメリットがあるのか
どういう製品に向くのか

 

知らない人が多いんですよ

 

 

はい、写真を見ればよくわかりますね

 

マイクロスコープっていう
顕微鏡下で石を留めることを
「マイクロセッティング」っていうんです

 

細かいところがよく見えます

 

だから小さいダイヤを留める
小さいツメでも
はっきり見えます

 

CADによって
以前は0.4mmくらいだったツメが
0.25mmまで細くできるようになりました

 

CADは小さい石枠も精密に作れます
だから、より小さいダイヤが使えるようなりました

 

昔は最小で1.3mm(専門用語だと1/100)くらいでしたが
マーケットに流通する最小サイズ
0.8mm(1/300)まで使えます

 

こういう極小ダイヤを
ラインに並べて
さらにテーブル面をそろえたりすることができるから
細いデザインがキレイなんです

 

 

マイクロはほかの効果もあります

 

今までの裸眼での石留め作業は
実際は見えていなくて、
「このくらいかな」っていう感覚で留めてました

 

だから、ちょっと手元がくるったり
チカラを入れすぎたりすると
石を割ってしまうことも多かった

 

その感覚を養うのが修行でした

 

 

ところがマイクロでは
ツメが石に接するところを見て留めています
だから、割れが少ない

 

見えているからおぼえるのも早く
作業スピードも早いし
早いから工賃も裸眼より安い

 

 

マイクロだから、という理由で
ふつうの2倍3倍の工賃を請求する
そういうメーカーもあるようですが
商売が上手すぎますね
実際のコストは安くなります

 

 

では、マイクロスコープが使えるようになれば
マイクロの威力が100%発揮できるか
というと、ちょっとちがいます

 

 

小さいダイヤは、
特に1.3mm以下のダイヤは
カットがよくないことが多く
一般的にはロット内で
カットも品質も不揃いのことが多い

 

そういうサイズでも
キッチリいいロットを仕入れて
カットをそろえて職人に支給する

 

そういう技術も必要です

 

細いラインのジュエリーで
ダイヤのカットがバラバラなら
うるうる感は半減します

 

ですからこの技術は
マイクロが使える職人
ダイヤの仕入れ、選別のプロ
CAD技術
などの複合技術なんです

 

 

 

商品開発に
実際の製作現場に
威力がおっきいマイクロセッティングなんですが
日本では普及してません

 

その理由ですが、まず、

 

「マイクロを使うと10年で目がダメになる」

 

出所がどこかわかりませんが
そんなウワサが
まことしやかにささやかれていました
だから日本ではチャレンジする人が出なかった

 

わたしもこのウワサにビビって
マイクロを導入できずにいました

 

ところが、事実じゃありません
中国やタイなどでもう20年以上使っている人が
今も現役です

 

 

また、マイクロを使うなら
若い時に始めないと効果がうすい

 

裸眼で習熟して、
そのまま年を取ると
スピードが習熟できません
100%効果は発揮できない

 

ところが
職人の道を若い人はえらばない
だから
マイクロセッティングができるメーカーが少ないんです

 

 

 

だれだって条件のいい職場を選びます

 

職人の世界は、実力の世界

 

見習いのうちは給与はおこずかい程度
見込みがなければクビ
賞与、残業代なんてとんでもない
稼げるようになるのは3年後

 

そういうブラックな世界ですから
若い人は就職しません

 

ですから年を経るごと作り手の平均年齢が高くなり
宝飾の作り手がいなくなり
プロがいなくなります

 

海外ではあたりまえの技術ですし
最先端はこれなくして製作できないんですが・・・

 

当社では作り手の確保のために
新卒を正社員で雇用して
見習いのうちから残業代も払います

 

新しい技術を取り込むにはしかたがありません

 

 

さすがに若い人はあっという間におぼえます
中堅もそれに引きずられて
いまではいろんな作業にまでマイクロを使います
当社の工房では手放せないツールです

 

 

いまの日本の方向性だと
日本では作るな、
手でおぼえる仕事は海外でやれ
と言われているような気がします

 

当社は時流に逆らっているのかな、と
少し不安ではあるのですが・・・

 

でもおかげで、
こんなジュエリーができるようになりました

 

 

ありがとうございました

 

※アイテムの価格は記事公開日時点のものとなっております。

  1. 額縁製作に携わるかたわら、ジュエリーの細かいダイアをカットしたり取り付けたりする技術は、どうやっているのだろう?
    と思っていたので、その技能に納得出来ました。でもマイクロスコープが無い
    9000年くらいの昔は、どうやっていたのでしょうね?
    こういった技は日本人は得意なわけでもないのですね😃

    1. O.K様

      コメントありがとうございます。
      本当に現代の道具や職人の技術には感服いたします。
      マイクロスコープが無い時代のジュエリーの加工技術も気になりますね😊

      今後ともオレフィーチェをよろしくお願いいたします。

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